081-100 タイトル
100 目深
099 分身
098 菊
097 夏の桜
096 バラの花びら
095 満開の桜
094 自分勝手
093 エッチ
092 王蟲の瞳
091 イタイイタイ病
090 シタイ
089 待機
088 強風警報
087 頭まで浸かる
086 目薬
085 階段
084 寝顔
083 白息
082 重心
081 葉布団
本編
100 目深 |
目深にしてた帽子を 君が盗ってった 眩しかったのは 陽ではなく君の笑顔で 瞼に焼きついて 消えてくれない この光を手に入れるための痛みは 犠牲というのだろうか |
099 分身 |
もしも いま 僕の目の前に僕がいたら こんな奴なんか 思い切り 殴ってしまうのに |
098 菊 |
大輪の菊が咲く 体に対し大きすぎる頭 潔い 頭でっかち それだけに全てを懸けるも 朽ち果てるのすら運命(さだめ)だと 嘆くこともない 大輪の菊がそよと揺れる |
097 夏の桜 |
窓の外に目をやる 梅雨の晴れ間の 夏の予告の風に 深い緑が揺れている こんなにざわついている 僕の心とはうらはらに どんなにざわめいても きもちよく揺れている 耳をすますと 波の音に似ているな 深呼吸して 黒板に目を戻す |
096 バラの花びら |
原付をとめようとしたら 隣の庭のバラの花びらが パラパラしいてあった ちょっとひかえめな バラのじゅうたんに ちょっとえらくなった気になって せきばらいをしてみる |
095 満開の桜 |
この長い坂道の両側が 桜色に染まる 今年は少し早いみたいだ なんて悲しい色なんだと思うのは 出会いと別れの季節だからだろうか、なんて 君を思い出すからに決まっているのに 気付かないフリをする 早く緑の葉がでてくればいい この陽気なら一週間もいらないだろう あたたかい風が まどろみの中に 君を連れて来てしまいそうで うたたねもできやしない だけど 一週間後 満開の八重桜と 黄緑色の風の中 元気に自転車をこぐために いまはこの長い坂道を ゆっくり歩こう |
094 自分勝手 |
ありのままに受け入れたい僕と どうしても何かに例えたい君は 結局 一緒にはいられないんだろうか 君といるとイライラしてしょうがないんだ どうしても他人でしかありえないとわかったうえで 他人の話を聴こうとしているつもりなんだけど 君といると自分勝手な僕ばかりが見えてきて イライラしてしょうがないんだ |
093 エッチ |
じつは終わった後に抱き合っているときの あの感じを味わうためにするのかもしんない じゃあ してるときは何なのよって 怒っちゃうかなぁ? 怒っちゃうかもね だから これは内緒ね でも こうやってぽかぽか気分で お昼食べているときに 君を思い出してみたら そのときの幸せそうな顔が浮かんできて いいなっておもったんだ |
092 王蟲の瞳 |
「どうしよっか?」と君が言い 「とうしたいの?」と僕が言い 「わからない」と君が言い 「じゃあ、こうしてるしかないんじゃない?」と 僕は冷たく言い放つ 怒った王蟲の様な街の灯が ホントに全部壊し始めたら 君を連れて逃げ出せるのに |
091 イタイイタイ病 |
みんな自分で居たくって みんな自分で痛くって 居たい居たいと泣きながら 痛い痛いとうずくまる 僕は君と居たくって だけどいつも痛くって 居たいけど痛くって 痛いから居たくなくって 痛いけど居たくって 痛くても居たくって 痛い痛いとと泣きべそかいて 居たい居たいとここに居る |
090 シタイ |
あれがシタイ それがシタイ どれがシタイ? あれもシタイ それもシタイ なにがシタイ? どれがシタイ? なにがシタイ? わからないの? けっきょく なにもしないのなら そこにころがるのは きみの死体 |
089 待機 |
待つのが得意なわけじゃない 我慢することに慣れてしまっただけ |
088 強風警報 |
強い風にむかって歩いていく 冷たい風のなかを歩いていく 負けるもんかと、闘志が湧いてくる 押し返されないように踏ん張って歩いていけば 風が止んだとき、次の一歩が強くなる気がして 負けるもんか、と歩いていく |
087 頭まで浸かる |
夜。 なんだかイライラする。 もやもやした気分のままお風呂に入る。 浮いてくる血管を切ってしまえば血はでるだろうか。 見てみたい気がする。 鮮血。 生きてる証。 頭を冷やそうと思い、頭まで浸かる。 聞こえるのは自分の心臓の音。 少し早い心臓の音。 生きている。生きている。 落ち着いてきた。 しばらく僕の音を聴く。 だんだん早くなってくる。 ふう、頭に血がのぼった。 ボーっとして何も考えられない。 まぁ、これでもいいか。 そして、白ワインをコーヒーカップで飲んでいる。 |
086 目薬 |
もう君のことくらいじゃ 涙も出なくなったから 目薬を点して 夜風に晒して 恋をしている気分になって 偽りの切なさに 白い溜息を吐いてみる |
085 階段 |
幸せへ続く階段は 螺旋に昇っているから 登り方が分からなくて 2・3歩上がったところで 後ろ向きに座り込んだ 顔を上げると まだ道は続いていた |
084 寝顔 |
こんなにも無防備な君を 全て手に入れるチャンスだと 寝ている君を食べちゃったとしたら たぶん 一番幸せで たぶん 一番不幸せ そんな僕の気持ちなんか知らないで 安心しきって寝てるから 起こしても構わないと 君の口唇を食べた |
083 白息 |
よかった どうやら僕の中身は 周りの外気より 冷えきってはいないようだ 吐く息が白い |
082 重心 |
ほんのちょっとの勇気が手に入らないと君は泣くのか バランスを崩した君は けれど強いから 少しの間 よりかかるものがあればまた歩き出せる 僕はきっと重心がズレているから いつも不安定で 誰かによりかかられているときだけ正常に思える 支えられているのは僕の方で 正常に戻してくれる何かをいつも探している けれど手に入れた安定では それが邪魔になって やっぱり前へ進めなくて 突き放すように背中を押した僕は 僕のほうがバランスを崩して また ズレたまま 安定をもたらす重みを探している |
081 葉布団 |
はっぱがおちる グルグルおちる おちることすら たのしむように はっぱがおちる リラリラおちる おちるものかと わずかにあえぐ はっぱがおちる ユラユラおちる ねぞうのわるい こどものために 母がかぶせる 毛布のように |
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