11-20 タイトル
13 置き傘
12 紅葉色の風
11 Self Portrait
本編
13 置き傘 | |
玄関に立ててある 見慣れない傘 僕ん家の飲み会で 忘れた傘 あのとき君はいつも通り ずいぶん早く着て 「ほら こんなに冷たいの」と 手袋もしない手を僕に握らせた いつになったら返そうか それまでずっと預かっておくよ なんてことはないビニール傘が 僕たちをつないでくれてる |
玄関に立ててある 見慣れた傘 柄にシールを貼った 透明な傘 あのときみんないつも通り 飲みながら笑って 「卒業おめでとう」の 乾杯がサヨナラを一緒に含んでた いつになったら返そうか それまでずっと預かっておくよ またみんなで集まる日まで 僕たちをつないでくれてる |
12 紅葉色の風 | |
うろこ雲が空を泳いでいく 僕は止まって息継ぎをする 二人が散歩をよくしたのは 息苦しかったんじゃないよね いつもの公園の いつものベンチ 急に立ち上がって 悪戯に笑って つむじ風が集めた 落ち葉を空に散らして 僕の目の前を 紅葉で染めてみせた 君はもういないのに わざと端に座って 冷たくなった手を ポケットで暖めてる |
この川は流れが緩やかだから 鏡みたいに景色が映る 水際のカエデが赤くなったら きっと来ようね そう言ったのに 約束嫌いの 君の約束 嘘ではなくて あのときの本当 暗くなれば紅葉も 何も関係ないと タバコの光を揺らしたホタル一匹 留まるのはいつでも 焦げた君への想い くすぶった火を消したのは 紅葉色の風 いつのまにか季節は 紅葉色の風 |
11 Self Portrait | |
彼は描きつづける 彼の真理を捕まえるため 何もなく薄暗い部屋の中 一塊の炭を握り締めて 彼の絵は売れるはずもなく 絵の具を買う金もなかったが そんなことは一向に構わず とにかく彼は描きつづける 何を描いてもどこか彼の似顔絵で だけど彼を表してはいなかった 何もない部屋 鏡もなく あいつにもらった目玉くらいの 水晶玉に映した彼の顔 自分の顔を描くなら目を瞑れ とあいつは言った なんだよ 暗闇しか見えねぇじゃねぇか 何か隠れてやしないかと 汚れた手で瞼を押すと 幾何学な光に襲われて 目が眩んだ |
もとから何もない彼の部屋 夜になると何も見えないが それでも彼は描きつづける 彼の真理を紡ぎだすため 朝になって光が当たると 出来上がった絵には赤があった 彼の指先は炭と血で混ざり 初めて彼の絵に色がついた 光を当てようと外へ飛び出した彼は 歓喜の声をあげる 一変する世界 ついに見つけたのは鮮やかな世界 彼の心理は部屋の外にあった 更なる真理を求めて 彼は旅に出る もとから何もない部屋 持ち出したのは スケッチブックとあいつにもらった水晶玉 最後に一度顔を映すと 出来たばかりの似顔絵で包んで できるだけ遠くに放り投げた それを拾ったどこかの誰かが 紙を開いて眺めてみると 初めて描いた彼のサイン 遠慮がちに左隅に 「Y」 |
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