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 制服 


制服
 たくさん勉強して、やっと念願の私立高校に合格した。今日は入学説明会だった。まだ制服が届いていないので中学のときのブレザーで行ったけど、憧れのセーラー服に袖を通す日は遠くない。思えば学力的にきつかったこの高校を目指したのも、この制服に一目惚れしたからだった。不純な動機という人もいるかもしれないけれど、私にとってはそれだけの価値がある。

「それでは、指定の書店で教科書を購入してください。辞書は基本的にどれでも構いませんが、迷う方は教科担当のオススメが16ページに書いてあります」

 説明会でもらった資料に目を通しながら、不自然な髪形をした学年主任という男との言葉を思い出す。どれでも構わないと言っておきながら、それを買って来いということなのだろう。あいつ絶対ヅラだ。あんなやつの言うことなんか聞くもんかと、わざとそれ以外のものを買いたい衝動に駆られる。一覧に目を通すと、教科書、副教材が教科ごとにずらっと並んでいる。すごい量だ。そして次のページには入学前にやっておくべき宿題と、勉強法が、これまたずらっと並んでいる。

(ゲッ、やっと受験勉強から解放されたと思ったのに、休んでるヒマないじゃん)

 ブツブツと文句を言いながらも顔は笑っている。大変だという思いの反面、これが高校というところなのだと思うと笑いがこみ上げてくる。もうすぐ私は女子高生。なんていい響きだろう。女子高生。これから私は恋をしたり、ちょっとだけ髪の毛を染めたりするのだろう。

(まてよ)

 もらったばかりでまだ顔写真も貼っていない生徒手帳を開き、校則を確認する。先輩たちの様子からすると、この学校の風紀はそれほど厳重でもなさそうだが、開放的というわけでもなさそうだ。せっかく女子高生になったのだからおしゃれをしたい。が、先生ににらまれたくもない。髪の毛の欄を見てみる。

「高校生らしい清潔な髪型が望ましい」

 先輩たちもやっているし、ちょっと染めるくらいは大丈夫だろう。肩についた髪は黒のゴムで結ぶ、などという時代遅れの校則じゃなくて良かった。続いて服装の欄を見る。

「みだりに男性を刺激しない服装」

 なんて曖昧なんだ。そもそも制服なのだから露出の高い格好を出来るわけじゃないし。スカート丈とか、ボタンのことを言っているのだろうか。新聞を広げている父に聞いてみた。

「ねえ、お父さん。男性を刺激する服装ってどういうの?」

 新聞から顔を上げ、少し考えてから父はこう答えた。

「そりゃー、やっぱりセーラー服だろう。」






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